木村秋則校長からのメッセージ

 

 

いま、日本の各地で畑の土が砂漠化しています。

 

化学肥料、農薬、除草剤を使って、雑草ひとつ生えていない、まるで砂漠のような土で作物を育てています。

 

現代農業によって、世界で最も肥沃な土といわれた日本の土を、わずか10数年で砂漠化させてしまいました。いまのところは、形だけは立派な作物を作っていますが、果たしてこれが永続可能な農業といえるのでしょうか。

 

土は多様な微生物のかたまりです。しかし、土壌消毒など農作業により、農地の微生物の数も種類も、ずいぶんと少なくなってしまっているのではないかと感じています。こうして、土壌微生物が多様性とバランスを失い、抵抗力を失うと、害虫が異常発生したり病気が猛威をふるったりと、ますます農薬などの化学対処療法に頼らざるを得ない、悪循環に陥ってしまっているのが現代農業の実態なのではないでしょうか。

 

私は、まだリンゴが実らなかった約10年の間、時間も沢山あったものですから、ありとあらゆる作物を肥料・農薬・除草剤を使わずに栽培して実験していました。そこで分かったことは、土を活かし、根を活かし、作物の特性を活かせば、どんな作物でも肥料・農薬・除草剤を使わなくても栽培可能だということです。

 

この経験と実践から生まれたのが、私が「自然栽培」と名付けたこの栽培方法です。当初は、この栽培を実践する生産者は数えるほどでしたが、現在では北海道から沖縄まで、日本中に自然栽培の輪が広がり多くの生産者が、この栽培で生計を立てるまでになりました。

 

今では、無農薬ではリンゴが実らなかった「奇跡のリンゴ」の話は過去のものです。

 

 

木村秋則はいま、「自然栽培普及」という第2の人生を歩んでいます。

 

 

ただ、だんだん体の無理もきかなくなってきました。今までは走ってきましたが、いつまでもそうもいきません。いつまでも「木村」ではなくて、私を踏み台にした新しい技術も開発してもらいたいし、次の世代の人たちに、この栽培の素晴らしさを深く理解してもらい、自らも走ってもらえたらと思っています。

 

世界を見渡せば、日本の農地はまだまだ恵まれています。

 

この農地があれば、何でも出来る。私はそう思います。

 

来るべき新しい時代のために、みんなと一緒になって「農業ルネッサンス」を起こしていきましょう。

 

平成26年3月
HOKKAIDO木村秋則自然栽培農学校  校長

木村秋則